特定のアミロイドーシス(たとえばアルツハイマー病などのアミロイド沈着に起因する疾患)の治療薬としてヨーロッパですでに承認され、米国食品医薬品局(FDA)によって承認審査中であるタファミディスと呼ばれる薬は、トランスサイレチン(TTR)の凝集を抑制することによって神経障害の進行を遅らせることができるのではないか、という研究報告。
トランスサイレチン家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR−FAP)は、全世界で約10,000人に影響を及ぼす病気であり、感覚消失、疼痛、筋力低下、便秘、下痢などの症状をもたらし、心筋症を引き起こす場合もあると言われている。TTR−FAPは致命的な進行性の疾患であり、治療を受けないケースでは、初期症状の発現から約10年後に死亡する可能性があると指摘されている。
トランスサイレチンは4個のたんぱく質で構成される四量体であるが、この四量体が分解して単量体になることでアミロイドは形成すると考えられている。蓄積したアミロイドは神経にダメージを与え、アミロイドーシスに至ると推察されている。
トランスサイレチンが有する2ヵ所のチロキシン結合部位に付着し、トランスサイレチンの解離を防ぐための薬としてタファミディスは開発された。血流における通常の生理的状況下やアミロイドが集まりやすい環境下でさえ、タファミディスはトランスサイレチン四量体を安定化していることが確認された。
アミロイドーシスを引き起こすトランスサイレチン変異体は100種類以上存在するが、タファミディスは大多数のトランスサイレチン変異体と結合し、四量体の状態を保持することができていた。
TTR−FAPの患者数は比較的少ないことから、タファミディスはオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)として知られるが、アミロイドの蓄積とそれを改善する薬は、製薬業界において興味深いものになるだろう、と研究者らはコメントしている。
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