現在日本で推奨されているたんぱく質(P)、脂肪(F)、炭水化物(C)のエネルギー比率(以下PFC比)は、生活活動強度?の20代女子の場合、12:25:63です(1)が、ダイエットをするときはエネルギー制限でたんぱく質の利用効率が悪くなることを考慮して、18:20:62くらいの比率にします。アメリカでは、PFC比15:30:55を推奨しています。
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さて、高たんぱく質ダイエットとは、このPFC比を変えて、たんぱく質から摂取するエネルギー比率を30%以上に高めた食事をすることで、より効果的にダイエットするというものです。極端な話、PFC比を変えれば、エネルギー摂取量をそれほど減らさなくても、劇的に痩せるというのです。他にも、類似の考え方に基づいて、脂肪のエネルギー比率を高くした高脂肪ダイエット、逆に低くした低脂肪ダイエット、炭水化物のエネルギー比率を低くした低炭水化物ダイエットなど様々なダイエット法があります。こうしたダイエット法の根本にあるのは、代謝のバランスをくずすということです(そうでなければ摂取エネルギーを下げずに痩せる理屈が立ちません)が、長期にわたって極端に偏ったPFC比の食事をしていると、生きていくのに必要な栄養素が足りなくなったり、脂肪だけでなく筋肉も落ちてしまう可能性があります。
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でも、ホントのことをいうと、PFC比を変えることで劇的にダイエットできるかどうかは、ちょっとあやしげではあります。その辺の詳しいことは、ニュースの解説を読んでいただくことにして、ここでひとつ注意しておかなければいけないのは、記事の中で「高たんぱく質ダイエット」という言葉が指し示す各々のダイエット法と、実際のPFC比の関係です。
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例えば、アトキンス・ダイエットは炭水化物のエネルギー摂取量を少量に制限する(第一段階では炭水化物の一日摂取量20g以下、その後少しずつ増やす)というダイエット法(3)なので、「高たんぱく質・低炭水化物ダイエット」と呼ばれます。これはわりと一般的に使われる言い方なのですが、時々ニュースの中では、「高たんぱく質」とだけ書いて、明らかにアトキンス・ダイエットをさしている記事が少なくありません(例:4、5)。場合によっては「高脂肪ダイエット」という表現でやはりアトキンスをさしている記事もあります(6)。アトキンス・ダイエットでは、炭水化物の摂取を制限する替わりに、基本的には肉、魚、卵などを好きなだけ食べてよい(食べてはならない食品の細かい指示はあります)ので、高たんぱく質や高脂肪とだけ表現しても誤りではないのですが、厳密にいうなら低炭水化物ダイエットに分類されます。
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ところが、同じ「低炭水化物ダイエット」といっても、ゾーン・ダイエットとアトキンス・ダイエットはかなり異なっています(7)。ゾーン・ダイエットは、総摂取エネルギーの30%をたんぱく質から、30%を脂質から、40%を炭水化物から摂取するもので、いってみれば比較的マイルドな低炭水化物ダイエット、それに較べると、アトキンス・ダイエットは、炭水化物の一日摂取量を20g、総エネルギー摂取量を1600kcalとした場合、炭水化物エネルギー比率は5%という超低炭水化物ダイエットなのです。実際に区別するときはそういう言い方をします。
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結局、何かを多くすれば残りは少なくなるので、PFCのどれに注目するかで名称が異なってきます。記事で触れているダイエット法がどのようなものであるかを知るには、そのような名称ではなく、そのダイエット法が提唱する食事のたんぱく質(P)、脂肪(F)、炭水化物(C)のエネルギー比率に注目する必要があるのです。
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ちなみに、ハリウッド・セレブリティ・ダイエットという名前のダイエット食品が ネットで売られていますが、ここで紹介しているいずれとも関係ないのでご注意くだ さい。ダイエット食品にもひょっとしたら効果があるのかもしれないけど、安全性を 考えるとまったくお勧めできません。
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