体の一部での炎症が動脈血栓の形成に影響することから、この20年ほど歯周病と心疾患の関係が取りざたされてきたが、口腔内の衛生状態が悪いと一日に歯を2回磨く者に比べ心疾患リスクが70%も高まるという、歯磨き回数と心疾患リスクの関係についての初めての研究結果がBMJ電子版に発表された。主任研究者はロンドン大学リチャードワット博士。
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同研究は1993年、1998年、2003年のスコットランド健康調査で集められた11869人の成人の喫煙、身体活動量などの生活習慣に関わる質問データおよび看護師訪問による心疾患の既往や家族歴の聞き取り、血圧計測、採血検査結果を、2007年11月までスコットランドの入院記録および死亡記録に照合し、Cox比例ハザードモデルを用いて解析された。
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質問項目のうち口腔ケアに関しては、歯科受診頻度(少なくとも6ヶ月に1回以上/毎年〜2年に1回/ほとんど行かない)と歯磨き頻度(1日2回以上/1回/1回未満)が問われた。
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口腔衛生習慣に関しては参加者10名中62%にあたる6人が半年に1回以上歯科受診をすると答え、71%にあたる7人が1日に2回以上歯を磨くと答える良好な結果であったが、冠動脈疾患リスクフアクターである社会階級、肥満・喫煙習慣の有無、心疾患の家族歴の影響を除外してデータを分析したところ、1日2回磨くと答えた群に比べ歯磨きを頻繁にしない群の心疾患リスクは70%も高まった。
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また、口腔ケア頻度が低いと炎症の指標であるC反応性蛋白(CRP)や血液凝固系の指標であるフィブリノゲンも高めの傾向が見られた。
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ワット博士は口腔衛生状態と冠動脈疾患リスクとの関係をより強固に証明し、炎症反応と口腔衛生との関係も明確にしたとし、今後は口腔衛生が冠動脈疾患の直接の原因なのか、単にリスクを高める要素であるかを確かめる必要があるとしている。
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