ポール・ブレナン博士らは、「欧州10ヶ国がんと栄養の前向きコホート調査(EPIC)」1992〜2000年参加者のうち、385,747人から提供された血清サンプルを使用し、ビタミンB群およびメチオニンの血清レベルを調査した。肺がん発症群は2006年までに観察された899人、そのコントロール群として1,770人について、国・性・出生日・血液採取日を個々にマッチングさせた。
要因調節後の結果から、ビタミンB6血清レベルが高まるほど肺がん発症リスクは低くなる傾向が認められ、メチオニンも同様の結果であった。この傾向は、喫煙歴の有無に関わらず認められたため、結果は喫煙による交絡の影響を受けていないという。また、喫煙歴のある場合に限り、血清葉酸レベルの上昇においても、肺がんの発症リスクに緩やかな低下が観察された。
研究者らは、「ビタミンB6、メチオニンともに、肺がん発症前5年間の平均値が血清基準の中央値以上であると、肺がんの発症リスクが少なくとも50%軽減されるのではないか」と予測している。さらに、「血清葉酸レベルを組み合わせると、同リスクを2/3に抑える可能性がある」としている。
今後の展望として、「これらの栄養素との因果関係は、将来の肺がん発症リスクを減じる至適レベルを明らかにする可能性があるが、タバコを吸う人の数を減らすことに勝るものはない。今後は、決して少数派ではない禁煙達成者や非喫煙者に発症する肺がんのリスクについて、ビタミンB群と関連する代謝機構を明らかにことが重要である」と、研究者らは結論を下している。
|