米国小児科学会が、有機農法で栽培された野菜や果物、家畜の肉や乳製品に関する報告書を発表した。有機食品は子供の発育を守るために有効であると考えられるが、栄養学的には、従来型農法によるものとの差はなかった。結論として多くの種類の食品を摂取することが、子の体に最も大切なことであるという。
米国では有機食品市場規模が、1996年の35億ドルから、2010年には285億ドルにまで拡大したという。化学肥料を使わない土壌で、薬剤耐性など化学的付加がない種を栽培して得られる農産物や、飼料を食べた家畜の乳や肉、それを原料とする製品は、その価格の高さにもかかわらず、支持が広がっているといえそうだ。しかし、従来型の農法による食品と有機食品いずれを選ぶべきかは、子を持つ親や、彼らに相談を受ける小児科医にとっても頭を悩ませるところである。
同学会では、有機農法の定義や、有機食品の表示基準を検証し、従来型製品と有機製品の栄養価を比較した。具体的にはビタミン、ミネラル、抗酸化物質、脂質、といった要素である。また、有機農法製品に関する研究を広範に集め、解析を行った。主には成長ホルモンや性ホルモンへの影響に関するものであった。その結果導き出された小児科学会としての標準的な見解は、次のようなものとなった。
すなわち、栄養学的には、有機食品は従来農法による食品と全く同等と考えられ、違いは認められなかった。また、有機食品が従来のものに比べて健康増進や疾病の予防に有効であるという直接的なエビデンスは今のところ知られていない。
しかし、農薬は従来農法に比べて少なかった(皆無というわけではない)。また、抗生物質の使用を通常禁止している動物が原料である有機食品の摂取によって、薬剤耐性菌への曝露が低まるということが期待できる。これらの事実は、化学薬品に脆弱な子どもの脳の発達を守るのに有効であることが考えられるという。
その一方、有機農法の実践にかかるコストから、製品が高価になることを指摘する。従来型農法でも残留農薬量が以前より減り、影響が低減しているといえる。限られた家計のやりくりを考慮すると、有機農法製品の選択よりは、様々な食品を摂取できる環境を作るほうが優先される、ということのようだ。
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