ヨーロッパのことわざ「1日にりんご1個で医者いらず」は、迷信でないかもしれない。米国オハイオ大学の研究
によると、約1ヶ月間毎日りんごを1個ずつ食べた人は、動脈硬化因子とされる酸化LDLが大幅に減少したという
。興味深いことに、りんごポリフェノールサプリメントを摂取した人にも多少の効果はあったものの、りんごそ
のものを食べた人ほどではなかったとのこと。
LDLコレステロールがフリーラジカルにより酸化されてできた酸化LDLは、動脈硬化の形成・進展に影響を及ぼす
とされる。酸化LDLは血管壁を損傷し、本来の血管拡張作用を損なう。さらに、酸化LDLが血管壁に沈着すること
で、アテローム性動脈硬化を引き起し、ひいては心血管疾患の原因となる。
筆頭研究者のディシルベストロ教授は、これまでにもクルクミンなどの香辛料や緑茶、トマトの抽出物など様々
な抗酸化物質を用いて酸化LDLの低下作用を研究していたが、りんごの効果はこれらを上回るものだった。
そもそも彼が今回の研究を行ったきっかけは、トルコにおけるりんごの研究論文を読んだことだったという。そ
の研究は、毎日りんごを食べると体内で特定の抗酸化酵素が増加するというものだった。ディシルベストロ教授
が行った実験ではトルコの研究と同様の効果は見られなかったそうだが、酸化LDLに対しては大幅な改善効果が
あることがわかり驚いたとのこと。
本実験は、対象者は40-60歳で非喫煙者、かつりんごを食べる頻度が月2回未満の人50人あまりとし3群に分け、4
週間毎日、次のものを摂取してもらった。
・りんご群:大きめの赤または黄りんご1個
・サプリ群:りんごから抽出したポリフェノール(194mg:りんご1個相当)をカプセルにしたもの
・プラセボ群:プラセボ・カプセル
結果、りんご群では酸化LDLが約40%も減少し、サプリ群でも減少はみられたが、りんご群ほどの効果はなく、プ
ラセボ群には変化がなかった。りんご群とサプリ群の効果の差について、ディシルベストロ教授は、りんごに含
まれる成分がこの効果の元となる生理活性物質の吸収を促進したためではないかと考察している。
なお本研究では、りんごが唾液中の抗酸化物質に影響を与え、口腔衛生に役立つ可能性も示唆されたとのこと。
出典は『機能性食品雑誌』。
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