善玉コレステロール、HDLを上昇させるのに用いられる薬が、コレステロール低下薬を服用している糖尿病の人の血糖値をコントロールするのにも有益である可能性が示唆されている。研究者らによれば、5年前に中止されたトルセトラピブの臨床試験を解析する中でこの事が判明した都のこと。トルセトラピブはコレステロール・エステル転移タンパク(CETP)抑制薬で、一般にはHDLを上昇させることが知られるが、心血管疾患を増加させる疑いから開発が中止されていた。
研究では、6,661人の2型糖尿病患者において、トルセトラピブ(ファイザー製)を、LDL低下作用のあるスタチン薬とともに摂取していた場合、血糖コントロールが改善していたと報告。スタチンのみや、プラセボを摂取していた場合にはこのような効果は見られなかった。
CETP阻害薬が心疾患リスクや脳卒中リスクを低下させるだけではなくて、血糖コントロールを糖尿病患者に於いて増進させること可能性は、糖尿病患者の臨床現場に於いて大変有望な期待を抱かせるものであると研究者は指摘する。世界には約2,200万人の糖尿病患者がいるといわれ、そのうち約90〜95%が2型糖尿病の罹患者である。糖尿病罹患はそのものが心疾患や、脳卒中、その他の疾患のリスクファクターでもあることから、糖尿病症状のコントロールはこれらの患者に於いて必要不可欠だ。
血糖コントロールのために開発された糖尿病薬があまり効果的ではなく、スタチン利用中の患者に於いては血糖を逆に上昇させる可能性があった。そのため、スタチン利用者に於いてはCETPを抑制することで糖尿病コントロールを悪化させる可能性を抑止することができるという利点がある。
さらにCETPの利用は、十分では無いものの、非糖尿病患者におけるグルコース及びインスリン値の改善も見ることが出来た。加えて、HDLレベルがトルセトラピブとスタチンの併用で1年摂取後に66.8%上昇したことが報告された。HDLを上昇させたトルセトラピブの効果が糖尿病コントロールに関わっているかどうかについては、未だよく分かっていない。現在、ダルセトラピブ(JT&ロシュ製)およびアナセトラピブ(メルク製)という同じ働きをする別の薬によってそのメカニズムについても明らかにされることが期待されている。
|