ダイエットサプリメント・ダイエット・健康・古代漢方薬の分子の謎

　チベットやネパールに生育するアジサイの一種の根から抽出される物質は、約2000年間マラリアの治療に用いられてきたが、その生理活性成分から誘導されるハロフギノン（ハロフジノン）は、害を及ぼす免疫細胞（Th17細胞）の発達を妨げるストレス応答経路を活性化し、自己免疫反応や炎症を抑制するのではないか、という研究報告。ハロフギノンは他の免疫反応を弱めることなく、自己免疫反応を阻害すると考えられ、さまざまな自己免疫疾患への新しいアプローチになり得ると期待されている。 以前の調査でハロフギノンは有益な免疫細胞に影響を与えずに、有害なTh17免疫細胞からの保護効果を持つことが示唆されている。Th17細胞は多くの自己免疫疾患（たとえば炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬）との関連が指摘されている。少量のHFはマウスで多発性硬化症を改善することが確かめられている。 ハロフギノンは、新たに発見されたアミノ酸反応（AAR）経路に関係する遺伝子のスイッチを入れることがさらなる試験により確認された。AAR経路は寿命の延長や年齢に関連した炎症性疾患の遅延に関係すると言われている。たんぱく質生成のためのアミノ酸供給が限られていることを細胞が検知したとき、炎症を起こした組織が大量のたんぱく質を必要とすることから、AARは炎症を促進する信号を遮断するという。 遺伝子のDNAコードからたんぱく質を構成するアミノ酸鎖への翻訳過程を調べることによって、ハロフギノンがAAR経路を活性化する作用機序を分析したところ、プロリンと呼ばれるアミノ酸が関与していることを突き止めた。ハロフギノンはグルタミル−プロリルtRNA合成酵素と結合し、プロリルtRNA合成酵素活性を抑えることによりAARを促進することがわかった。 他のアミノ酸補給で変化は見られなかったが、プロリンを補給することでハロフギノンのTh17細胞分化に対する効果は減少した。プロリンを加えることは、マラリア原虫や特定の細胞プロセスへの有効性を弱めたが、他のアミノ酸では同様の減弱効果は認められなかった。 ハロフギノンは治療的な用途に加えて、AAR経路の調査にも役立つ可能性があるだろう、と研究者らは提言している。