一方、同時に公表されたメタボ関連要因と循環器疾患発症との関連ついての調査結果も、肥満なしでメタボ関連要因に該当する人たちの循環器疾患発症リスクが決して低くないことを示唆する内容となっています。
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平均約11年に及んだこの調査の追跡期間中に循環器疾患と診断された人は男性395人、女性298人でした。メタボリックシンドロームと循環器疾患発症の関連をみると、とくに男性では虚血性循環器疾患(心筋梗塞、狭心症などの虚血性心疾患と脳梗塞)の発症にメタボリックシンドロームが深くかかわっていることが明らかになりました。出血性脳卒中(脳内出血およびくも膜下出血)の発症との関連は認められませんでした。
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虚血性循環器疾患のハイリスク要因とされる高血圧とメタボリックシンドローム(日米両基準で対象者を抽出)について、それぞれに該当しなかった場合と比べて発症リスクがどの程度高まったかを表す「寄与危険度割合」を調べると、高血圧は男女とも約5割だったのに対しメタボリックシンドロームは20%未満に止まり、高血圧による虚血性循環器疾患発症リスクがメタボリックシンドロームによるリスクを大きく上回ることがわかりました
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またメタボリックシンドロームに限っていえば、肥満を必須としていない米基準該当者のほうが日本基準該当者よりも寄与危険度割合が高くなりました。肥満との関連をさらに詳しく分析するため、対象者をBMI25未満と25以上でグループ分けし、メタボ関連要因の該当状況別の寄与危険度割合をみると、割合が高かったのは「BMI25未満でそのほかのメタボ関連要因2つ以上」(男性20%、女性14%)、「BMI25未満でかつメタボ関連要因1 つ」( 男性13%、女性11%)のいずれも肥満に該当しないグループでした
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これらの結果から研究班は、「血圧高値と比較してメタボリックシンドロームは循環器疾患発症に対する関係も寄与も小さく、さらに肥満を必須としたメタボリックシンドロームでは非肥満の高リスク群を見落とす可能性がある」と懸念。「日本人の循環器疾患予防対策ではメタボリックシンドローム以上に高血圧対策を推進していくことが重要」と述べています。
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今回はこの2つの調査のほかに、メタボ関連要因とがんの関連についての調査結果も公表されました。この調査ではメタボリックシンドローム該当グループと、メタボ関連要因への該当がないグループ間で各種がんの発症リスクを比較しましたが、全体比較でもメタボ関連要因で個別に比較した場合でも、はっきりした関連性を見出すことはできませんでした。がんの部位別でも、男性の肝がんと女性の膵がんではメタボリックシンドローム該当者の発症リスクがそうでない人よりも高くなっていましたが、そのほかのがんでははっきりしたことはわかりませんでした。
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この結果について研究班は、メタボ関連要因やメタボリックシンドロームには、「がんにかかるリスクを左右するようなインパクトはないことがわかった」と分析。そのうえで「がん予防のためには、たばこ対策など従来から知られている対策が重要といえる」との見解を示しています。
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